すい臓がんの予後と5年生存率~医学的な病状の見通し~

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2017.1.1

佐藤 典宏

この記事の監修者

産業医科大学 第一外科
医師 佐藤 典宏

予後

すい臓がんは死亡率が非常に高いがんですので、治療後(手術後)の予後は悪い傾向にあります。

手術によりすい臓にできたがんをすべて切除できたとしても、約90%の患者が再発するといわれています。これは、すい臓がんは早い段階で周囲のリンパ節や遠くの臓器に転移するためです。

すい臓がんの5年生存率

※ ステージとは、「がんの進行度合」という意味です。詳しくはこちらがんのステージ・病期・進行度

※ 5年実測生存率とは、「がんの治療を始めた人の中で5年後に生存している人の割合」という意味です。詳しくはこちらがんでよく使う5年生存率とは

※ 5年相対生存率とは、 「がんの人とがんではない性別と年齢が同じ人の5年後の生存率を比べた割合」という意味です。詳しくはこちら5年相対生存率とは

がんの種類 ステージ 5年実測生存率(%) 5年相対生存率(%)
膵臓 I


IV
不明
36.0
16.1
5.7
1.4
19.5
8.2
40.3
18.0
6.3
1.6
22.2
9.1

※ 公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計'15」全国がん(成人病)センター協議会加盟施設における5年生存率(2004~2007年診断例)より引用

すい臓がんの5年生存率は、全がん(全種類のがん)の平均よりも下回っておりますので、平均よりも予後(回復の見通し)が悪いがんであるということがいえます。

特にすい臓がんは、ステージIの最も早期であっても5年生存率が50%以下と非常に低く、早期の発見が難しい上に治療が難しいので「がんの王様」と呼ばれています。

すい臓がんを根治させるためには外科手術により病巣部位を完全に切除する必要がありますが、すい臓がんは症状がほとんどないため発見が遅れ、手術ができるのは、患者全体の20~30%程度しかありません。

切除手術ができたとしても、5年生存率は20%程度と極めて低く、消化器系のがんの中では最も低い数字となっています。

切除手術ができない場合には化学療法や放射線療法、痛みを緩和させる支持療法などを組み合わせて治療します。

すい臓がん患者全体でみると、5年生存率は5~10%と極めて低い数値です。

すい臓がんの再発・転移

膵癌の再発・転移しやすい場所

すい臓がんは、手術ができた場合でも生存率の非常に低いがんです。これは、すい臓がんが再発・転移しやすいことと関係しています。

どんながんでも治療後の再発リスクはつきものですが、特にすい臓がんはまだ小さいうちからすい臓をはみ出して周囲に広がりやすいため、再発率は非常に高くなります。

つまり手術で病変をすべて切除できたように見えても、実は目に見えないがん細胞が残っていたり、もしくは既に他の臓器に転移していたりすることが多いのです。

それが時間の経過とともに成長して、再発や転移という形で発見されることになります。

すい臓がん手術後の再発は、多くが3年以内に見られるため、この間は特に慎重な経過観察が必要です。

ちなみに再発したすい臓がんに対しては、原則的に再手術の適応とはなりませんので、化学療法を中心とし、放射線療法、支持療法(緩和ケア)などが行われます。

またすい臓がんが転移しやすい場所としては、まず肝臓が挙げられます。その他、肺や脳、骨、腹膜なども転移しやすいところです。

特に肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、すい臓がんと同じく症状の現れにくい場所ですので、発見が遅れる傾向にあります。

このようにすい臓がんは、手術ができたとしても決して安心できないがんです。

術後は医師の指示にしたがって定期検査を受け、再発・転移を早期発見することが大切です。

膵臓がんはできた場所で手術の方法が変わる

膵臓がんは、がんが膵頭部にできたのか、それとも膵体尾部にできたのかで手術の方法が変わってきます。

イラストをみながら読み進めてみてください。

がんが膵頭部にできた場合

がんが膵頭部にできた場合は、「膵頭十二指腸切除術」が行われます。これは、膵臓の頭部と、十二指腸、そして、胆管の一部や胆のうを切除する手術です。

胃については、出口(幽門輪)を含めて残す場合と一部を切除する場合があり、進行度や施設(術者)の基準によってどちらかが選択されます。

膵頭部周囲は複数の臓器が密集するため、手術には高度な技術が必要となります。

がんが大きな血管(門脈)に浸潤している場合は、一部を合併切除することもあります。

切除後にはすい臓や胆管、胃(または十二指腸)と腸との吻合(つなぎなおし)が必要となります。

がんが膵体尾部にできた場合

がんが膵体尾部にできた場合は、「尾側膵切除術(または膵体尾部切除術)」が行われます。これは、膵体尾部とそれに隣接する脾臓を摘出する手術のことです。

がんの進行によっては、その他の臓器を合併切除したり、また腹腔動脈(ふくくうどうみゃく)という大きな動脈を合併切除することもあります。

がんが膵臓全体に及ぶ場合

がんが膵臓全体にまで拡がっている場合は、「膵全摘術」が行われます。これは、膵臓を十二指腸(および場合によっては胃の一部)、胆のう、胆管の一部、脾臓と一緒に切除する手術で、「膵頭十二指腸切除術」と「尾側膵切除術」を組み合わせた手術となります。

切除する範囲が広い手術となり、また全ての膵臓の機能を失うために、術後は消化酵素の内服や血糖値をコントロールするためのインスリン注射が必要となります。

膵体尾部のがんの方が予後は良好

膵臓がん全体として予後が厳しいことは否めませんが、膵頭部にできたがんと膵体尾部にできたがんとでは、膵体尾部にできたがんのほうが予後は良好です。

膵臓がん全体としては、ステージⅠの5年生存率は約6割ですが、膵体尾部にがんができた患者さんで、ステージⅠの時に手術を受けた場合は、5年生存率が約8割近くにもなります。

ただ、現状としては膵頭部がんの方が発症率は高いですし、ステージⅠの段階でがんを発見できる確率は低いという難しさはあります。

膵臓がんの手術は難度が高く、そのため高い技術が求められます。また、膵臓がんに対する外科切除術では、手術症例数が一定以上ある専門医のいる施設では合併症が少ない傾向があるとの報告があります。

ですから、膵臓がんの手術を受ける場合は、膵臓の手術において豊富な験を持つ医師がいる医療機関での手術がお勧めです。

参考文献

  1. がん情報サービス | 膵臓がん
  2. 書籍 | 「膵がん」と言われたら… (お医者さんの話がよくわかるから安心できる)
  3. 公益財団法人 日本医療機能評価機構 Minds | 膵癌
  4. 国立がん研究センター がんの統計’15
  5. 慶應義塾大学病院 KOMPAS 肝臓と胆嚢と膵臓のがんと腫瘍
  6. その他

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