乳がんの治療法~標準治療から最新治療法まで~

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2017.2.10

小関 淳

この記事の監修者

日本大学病院 乳腺内分泌外科 助手 病棟医長
女性医療クリニックLUNAグループ 乳腺外科担当
医師 小関 淳

乳がんの代表的な治療法は下記です。

  • 外科療法
  • 化学療法
  • 分子標的療法
  • ホルモン療法
  • 放射線療法
  • 再建術

乳がんがステージ0~Ⅲ期の場合は、必ず外科療法による手術を行います。ステージIV期の場合でも、手術を行うケースもあります。

外科療法が乳がん根治への重要な治療になりますが、他にも、化学療法・分子標的療法・ホルモン療法・放射線療法などを併用した集学的治療を行います。

乳がんのステージ別治療法

外科療法

乳房のしくみ

乳がんの手術というと、乳房をすべて切除するといったイメージを持たれやすいのですが、現在では、乳房全摘術はかなり進行していない限り、できるだけ行われません。

現在では、乳房温存術が治療の第一選択肢となり、全体の約40%以上を占めています。

乳房温存術

乳房をできるだけ残すように、腫瘍を含めた切除範囲を最小限に留める手術法です。

がんの腫瘍ができた部位より1~2cm程度大きめに円形や扇形に切除し、皮膚は一部切開するか、全く切除しない程度です。乳房に多少のひきつれや変形は生じますが、乳房は温存できます。

ただし、温存術は再発のリスクが高くなるため、手術後に放射線療法を行い、再発を防ぎます。

乳房温存術が適応されるのは、下記のような場合です。

  • 腫瘍の大きさが直径3cm以下(直径4cmでも可能な場合も)
  • がんが広く浸潤していない
  • 複数箇所に多発していない(近くにあり安全であれば可能な場合も)
  • リンパ節への転移がない。または、軽度に留まる
  • 放射線照射が可能である

胸筋温存乳房切除術

乳房とわきの下のリンパ節のみ切除し、胸筋は残す手術法です。現在では最も一般的な手術法となっています。

胸筋まで同時に切除する胸筋合併乳房切除術は、現在では腕のむくみや腕の上げ下ろしなどで後遺症が残るケースが多いので、がんが胸筋にまで達している場合のみ行われます。

乳房を温存しない治療法ですが、最も再発率が低く、根治が期待できる治療法です。

乳房全摘術

乳房全摘術では、乳房とリンパ節を同時に切除し、胸筋はなるべく残す手術法です。

温存術ができないぐらい進行していたり、がんが広範囲に及ぶ場合は、この乳房全摘術が行われますが、乳房再建術が充実してきたこともあり、再発の可能性が低い乳房全摘術を選ぶ患者も増えています。

温存術と全摘術の割合は、現在では半々とされています。

スキンスペアリングマステクトミー

温存術ができないほど進行している場合に、乳首と乳房の皮膚を残して、乳房の中身だけを取り除く手術法です。

乳房の中身を取り除いた後に、生理食塩水バックやシリコンバックを入れることにより、乳房を再建します。乳房の大きさをある程度調整できるので、見た目はほぼ元通りになります。

最近では、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが、予防的に、スキンスペアリングマステクトミーを受けたことが、記憶に新しいところです。

センチネルリンパ節生検

検査

センチネルリンパ節はわきの下にあるリンパ節ですが、乳がんがリンパ節に転移する際に1番最初に転移するのが、このセンチネルリンパ節です。

よって、センチネルリンパ節の一部を採取し、がん細胞が転移しているか調べることで、リンパ節転移の有無がわかり、リンパ節を郭清(切除)した方がよいのかどうか判断できるのです。

リンパ節を郭清すると、腕がむくんだり、腕が上がらない、腕が痛いなどの後遺症が残りやすいので、センチネルリンパ節生検により転移が見つからなければ、リンパ節は郭清しません。見つかればリンパ節をすべて郭清します。

センチネルリンパ節生検は、通常手術中に行われ、その場で病理医により迅速にがん細胞の有無が調べられますが、最近では、外来や短期入院でセンチネルリンパ節生検だけを行うところもあります。

化学療法

抗がん剤

乳がんは抗がん剤による化学療法がよく効くという性質がありますので、手術前や手術後に行われます。

術前化学療法では、がんを縮小させる目的で抗がん剤を投与します。手術前にがんを縮小させることで、乳房温存術ができる可能性を高めたり、手術の効果を高めることができます。

術前化学療法では、シクロホスファミドエピルビシンフルオロウラシルの3剤を組み合わせた「CEF療法」、シクロホスファミド・ドキソルビシン・フルオロウラシルの3剤を組み合わせた「CAF療法」、他にも「EC療法」「AC療法」「TC療法」「ドセタキセル療法」「パクリタキセル療法」などが行われます。

術後化学療法では、主に再発防止を目的としています。

乳房内や全身に細かく散らばった小さながん細胞を死滅させることで、再発を予防することができます。使用する抗がん剤は、術前化学療法と同様です。

分子標的療法

分子標的療法とは、がん細胞がもつ特定の物質のみに働きかける治療法です。

乳がんの約20~30%は、がん細胞の表面に「HER2タンパク」という特殊なたんぱく質を持っています。

HER2

HER2タンパクは、がん細胞の増殖に必要な栄養素を取り込むという働きがあるため、分子標的治療薬を投与することにより、HER2タンパクの働きを阻害し、がんの増殖を防ぎます。

分子標的治療薬としては、主にトラスツズマブ(ハーセプチン)という治療薬を用います。

ただし分子標的療法は、HER2タンパクを豊富に持つがん細胞にしか効果がありません。

ホルモン療法

ホルモン療法のしくみ

乳がんの内、約70%は女性ホルモンの影響を受け増殖します。

ホルモン療法では、女性ホルモンの分泌を抑制したり、女性ホルモンへ変換される経路をブロックしたりすることで、がんの増殖を抑えます。

ただし、女性ホルモンの影響を受けやすいタイプの乳がんにのみ効果がありますので、事前にがんがホルモン受容体(エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体)を持っているかどうか、検査する必要があります。

放射線療法

乳がんの放射線療法では、主に再発を防ぐ目的で行われます。

特に乳房を温存すると、再発の可能性が上がりますので、手術後に放射線を照射することで、乳房に残った小さながん細胞を死滅させます。

乳房再建術

乳がんの治療により、形が崩れたり失った乳房を再建するのが、乳房再建術です。

近年、乳房再建術を希望する患者が増え、再建技術も大幅に向上しています。

再建の方法としては2通りあり、1つが乳房の中にシリコンバッグなどの人工材料を挿入する方法、もう1つが、背中や下腹部などの脂肪や皮膚を切り取って、乳房に挿入する方法です。

乳首や乳輪の再建をすることもでき、反対側の乳首や乳輪を半分移植したり、人工乳頭を移植したり、入れ墨をすることで再建できます。

乳房を切らずに治す、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)治療

ラジオ波

乳がんの治療法は、上記のように外科療法や化学療法、放射線療法をはじめとして様々なものがあり、がんの進行度やタイプによって適宜選択または組み合わせて治療が進められます。

その中でも乳房を切除する方法は予後のよい治療法と言えますが、それでも身体の一部を切除することは身体的にも精神的にも負担がかかることは避けられません。

そこで、乳がんに対する新しい治療法として、ラジオ波焼灼治療と呼ばれる先進医療が注目を集めています。ラジオ波焼灼治療とは、患部に針を挿入して数分にわたって電気を通し、電気による熱エネルギーでがん細胞を損壊させる治療法です。

外科療法のように組織を切除する必要がなく、しかも治療効果が外科療法に比べて遜色ないことから、乳がんに対する治療法の1つとして期待が寄せられています。

外科療法が難しい症例でもラジオ波焼灼治療による治療が可能であることもあります。

ただし、ラジオ波焼灼治療が可能な症状は現在のところ限られており、しこりの大きさや皮膚からの距離等によっては不適格の場合があります。

また、ラジオ波焼灼治療は厚生労働省が定めた先進医療に該当するため、治療を受けるためには全額自己負担になります。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス | 乳がん
  2. 公益財団法人 日本医療機能評価機構 Minds 有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン 2013年度版
  3. がん研有明病院 がんに関する情報 乳がん
  4. 国立がん研究センター がんの統計’15
  5. 慶應義塾大学病院 KOMPAS | 乳がん
  6. その他

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