肺がんの分子標的薬の効果と副作用

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2017.1.1

舟橋 均

この記事の執筆者

工学博士 舟橋 均

分子標的薬は、肺がんの増殖、浸潤、転移といったがんの進行に関わるがん細胞特有作用を抑える抗がん剤として開発されたものです。

一般的な抗がん剤は活発に増殖するがん細胞の増殖特性のみに着目して、増殖の速い細胞を無差別に攻撃する薬剤です。

一方、分子標的薬というのは、がん細胞が活発に増殖するメカニズムが解明されることにより、ターゲットとなるがん細胞特有の物質の作用を阻害する、すなわち、がん化した細胞を狙い撃ちすることを目的に開発されました。

従来の抗がん剤が持つ副作用を抑えることが期待されましたが、実際には、副作用が消えたというわけではありません。

分子標的薬の効果と副作用の現状

正常な細胞には無い増殖制御を無効にするがん細胞特有の生体物質を発見することが分子標的薬研究のベースになっています。

実際に見いだされた生体物質はがん細胞で特異的に多く造りだされる物質であって、正常な細胞で全く合成されることが無い物質であるということはありません。

すなわち、副作用が全くないという抗がん剤の開発には至っておりません。

しかしながら、がん細胞のオリジナリティーとも言える物質の機能を抑えることで、抗がん剤としての効き目は画期的に向上することに変わりはありません。

肺がんへの適用が承認されている分子標的薬

一般名 商品名 作用 形状 頻度の高い一般的な副作用
ゲフィチニブ イレッサ EGFR
阻害薬
経口(錠剤) 発疹、かゆみ、皮膚乾燥、皮膚の亀裂、にきび様の皮疹、下痢、肝機能障害、体がだるい、食欲減退
エルロチニブ タルセバ 経口(錠剤) 発疹、皮膚乾燥、かゆみ、爪の変化などの皮膚症状、下痢
アファチニブ ジオトリフ 経口(錠剤) 下痢、口内炎、皮膚症状、爪の異常
クリゾチニブ ザーコリ ALK
阻害薬
経口(カプセル) 視覚異常、悪心、嘔吐、下痢、便秘、浮腫、疲労、めまい、感覚麻痺、味覚異常、食欲減退
アレクチニブ アレセンサ 経口(カプセル) 味覚異常、発疹、便秘
セリチニブ ジカディア 経口(カプセル) 悪心、下痢、嘔吐、高血糖、肝機能障害、動悸、立ち眩み、発熱、胸痛、感染症
ベバシズマブ アバスチン 血管新生阻害薬 点滴静注 好中球減少、白血球減少、出血、高血圧、神経毒性、疲労・倦怠感、食欲減退、悪心、口内炎、脱毛症、血小板減少、尿蛋白陽性、感染症
ラムシルマブ サイラムザ 点滴静注 好中球減少症、口内炎、鼻出血、末梢性浮腫、発熱性好中球減少症

(参照元:「国立がん研究サンタ―のがんの本 肺がん 治療・検査・療養」の「分子標的薬の効果と副作用」並びに各商品の製造販売会社の情報をもとに作成)

肺がん細胞特有の生体物質の機能を抑える分子標的薬は、肺がんを引き起こすメカニズムが解明されることによって見出されたEGFR阻害薬、ALK阻害薬および血管新生阻害薬の三種類に大別されます。

EGFR阻害薬

EGFRというのは、脳から出てくる細胞の増殖や成長を促す上皮成長因子(EGF)を認識する細胞表面にあるタンパク質です。

非小細胞がんの4割から8割はEGFRが過剰に存在しており、正常細胞よりも増殖しやすい状態になっています。

EGFRが活性化することでチロシンキナーゼという細胞の分裂に関与する酵素が細胞内で活性化されることになり、そのチロシンキナーゼの活性化を抑える物質が分子標的薬として承認されています。

ALK阻害薬

この分子標的薬はEGFR阻害薬と同じくチロシンキナーゼを阻害することで、細胞が分裂・増殖することを抑制します。

EGFR阻害薬がEGFRに上皮成長因子が結合することで起こるチロシンキナーゼの活性化を抑えるのに対して、ALK阻害薬ではALK融合遺伝子によって合成されるチロシンキナーゼの活性化を選択的に阻害します。

ALK融合遺伝子は、2007年に肺腺がん細胞から発見されたがん細胞特有の発がん遺伝子です。

血管新生阻害薬

がん細胞には、活発な増殖を支えるために必要な栄養素を確保するために血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を活性化して新たに血管を産み出す能力があります。

血管新生阻害薬は、VEGFを阻害することでがん細胞への栄養供給を遮断する分子標的薬です。

分子標的薬の副作用

分子標的薬は、副作用の少ない抗がん剤という期待のもとに開発されました。

しかし、発がんメカニズムをターゲットにしている分だけ効果的ではありますが、遺伝子が過剰に発現して増殖の制御が利かなくなったというだけで、正常な細胞への影響がない、すなわち、副作用を抑えるということは実現できていません。

分子標的薬にも、低頻度ではありますが、従来の抗がん剤と同様に間質性肺炎、血栓症や高血圧あるいは心不全や消化管穿孔といった重篤な副作用もありますし、咳や発熱、疲労、食欲不振といった副作用もあります。

また、使用する分子標的薬に応じて高頻度で起こる一般的な副作用が確認されており、それらは各分子標的薬の作用メカニズムに依存しています。

参考文献

  1. 国立がん研究センターのがんの本「肺がん」
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