肺がんの放射線療法の副作用と対処法

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舟橋 均

この記事の執筆者

工学博士 舟橋 均

放射線療法は患部にある肺がんをターゲットにした局所療法の一つですので、化学療法のような全身に起こる副作用はありません。

しかし、放射線が通過する部位や患部の近辺に照射される放射線の影響によって、正常細胞が損傷を受けることによる副作用が発生する治療方法が放射線治療です。

放射線の強度が弱くなれば治療効果も低下しますし、高くなれば副作用の程度も大きくなります。

副作用を軽くするための新しい放射線療法も開発されていますが、全く副作用のリスクが無いという方法はありません。

放射線療法によって起こる副作用のメカニズム

放射線の照射を受けた細胞は、間接的あるいは直接的に細胞を構成する物質が傷つくことになります。

放射線療法ではがん細胞が異常に増殖する原因となっている遺伝子を損傷させることを目的として、ターゲットとなる病巣や患者の健康状態を配慮して線量を決定します。

通常は選択的にがん細胞の遺伝子のみを攻撃することが出来ませんので、治療の際に照射された正常細胞の遺伝子も傷つけられる可能性があります。

損傷を受けた正常細胞はがん細胞と共に体にとって不要なものとして、免疫細胞の炎症反応という攻撃を受けることになります。

放射線の照射を受けて損傷した細胞が発生し異物と認識されると、他の異物と同様に免疫細胞の捕食作用である炎症反応によって分解排除されることになります。

この炎症反応が発生する部位によって、肺がんの放射線治療による副作用が発生することになります。

正常細胞ががん化する可能性もゼロではありませんが、現代の技術では適切な照射量や照射方法を選択することによってがんが発症するケースは限りなくゼロに近いと言っても過言ではありません。

肺がんの放射線治療による典型的な副作用と対処法

放射線療法の副作用は、治療中あるいは治療後の早い段階で起こる早期反応と数か月以上が経過してから起こる晩期反応によるものがあります。

早期反応は免疫システムの影響によって起こる炎症反応です。

放射線が当たった場所によって、皮膚炎、食道炎、肺臓炎、あるいは骨髄炎がありますが、通常は、炎症を抑えるステロイド系の薬が処方されます。

晩期反応は、炎症が継続することによって起こる組織の線維化とそれに伴う潰瘍や呼吸障害などが挙げられます。

気になる症状が感じられたときには、担当医に相談して早い段階で適切な治療を受けることが重要です。

皮膚炎

放射線療法における放射線は体外から照射されますので、最初に影響を受けるのが皮膚組織です。

皮膚の細胞は細胞の更新が活発に行われていますので放射線の影響が大きく、治療を開始してから2週間目くらいには皮膚が赤くなり、時間の経過と共に黒ずんで皮膚の更新と共に消えていきます。

しかしながら、炎症反応に伴うかゆみが酷く、掻いたり擦ったりすることでその部分がただれたり潰瘍になることがあります。

皮膚炎が起こった箇所はできるだけ刺激を与えることが無いように、冷やしたタオルなどで当てることによって炎症を鎮めることが大切です。

食道炎

リンパ節に転移した肺がんにおいて放射線治療を行う場合に、リンパ節と並行して存在する食道の粘膜に放射線が照射されることによって起こる炎症です。

胸焼けや食べ物が通過する度に痛みを感じるようになり、悪化すると水分が食道を通過するだけでも痛みを感じるようになる場合もあります。

刺激物は炎症部位を刺激しますので、食べないようにする必要があります。

また、固形物が食道を通過する度に炎症部位を擦ることになりますので、食事は良く咀嚼して大きいまま飲み込むことが無いようにしましょう。

通常は放射線の照射が終了してから2週間程度で症状が軽くなりますが、痛みが酷い時には粘膜保護剤や痛み止めが処方されます。

肺臓炎

肺実質に起こる炎症である実質性肺炎に対して、間質性肺炎や肺臓炎と呼ばれている副作用です。

範囲が小さいケースでは目立った症状がありませんが、広範囲で炎症が起こると咳や発熱を伴うようになり呼吸障害が起こるケースもあります。

肺がんの放射線治療では肺を避けて照射することはできませんので、肺の内部で放射線が通過した部位で炎症が起こる可能性があります。

放射線治療の副作用で起こる肺の炎症は免疫反応が関与していますので、肺の機能を支える肺実質よりも免疫細胞が送られる血管やリンパ系が通っている肺間質に炎症が起こります。

重症化すると生命が脅かされることにもなりますので、風邪と類似した症状が続き息苦しいときには担当医に進言するようにしましょう。

脊髄炎

脊髄を構成する細胞は放射線照射に弱いので、肺がんの放射線療法では脊髄に50グレイ以上の放射線が照射されることが無いように配慮されます。

しかし、治療が終了してから半年以上が経過してからでも、治療時の微量の放射線の影響によって発症する可能性のある副作用が脊髄炎です。

脊髄は神経が通っている部位ですので脊髄に炎症が起こると手足の痺れや麻痺がおこることがあり、QOL(生活の質)が著しく低下することになります。

参考文献

  1. 国立がん研究センターのがんの本「肺がん」
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