肺がんの胸腔鏡手術のメリット・デメリット

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2017.1.1

舟橋 均

この記事の執筆者

工学博士 舟橋 均

原発巣からの転移が起こっていない、すなわち、肺がんが発生している側の肺にしかがんが存在しない初期の肺がんでは、外科手術が第一の治療の選択肢となります。

しかし、呼吸に関係する臓器であって多くの血管が通っている肺の手術というと、手術経験のある患者でも不安になるものです。

さて、肺がんの外科手術と一口に言っても、がんの状況や場所によって切除する量は変わってきます。

肺がんの外科手術では、基本的には切開して病巣を切除する開胸手術を行いますが、患者の負担が少ない胸腔鏡手術という方法もあります。

ただし、外科的治療が必要な全ての肺がんに胸腔鏡手術が適用できるというわけではありませんし、出来る病院も限られてきます。

胸腔鏡手術はどんな手術?

胸を開いて肺に直接メスを入れる開胸手術と異なり、2㎝から3㎝程度の穴を胸の側面から3ヵ所からないし4ヵ所あけ、胸腔鏡という内視鏡や鉗子、自動縫合器などの手術器具を挿入して行います。

手術器具を挿入するといっても、空いている穴は2、3㎝ですので通常の手術で使用される道具を挿入するのではなく、内視鏡手術専用の器具を挿入します。

胸腔鏡で得られる患部の画像をモニターで見ながら、手術器具を体外で操作して患部を切除することになります。

胸腔鏡手術が出来ない状態?

肺がんの広がり度合いによっては、がんが発症している側の肺を全て切除することもありますが、原発巣に近いリンパ節に転移しているために肺葉を切除するという術式が最も多いケースです。

肺は一塊の臓器というわけではなく、右は上葉、中葉、下葉の三つ、左は上葉と下葉の二つのパーツに分かれています。

当然ながら切り取った病巣を摘出するのも最初に開けた穴ですので、胸腔鏡手術だけではあまり大きながんは摘出することが出来ません。

このような場合には8㎝程度の開胸を行い、胸腔鏡手術をサブ的に利用することで開胸する大きさを最小限にとどめる術式があります。
通常の開胸手術と異なり執刀医が患部を直接黙視できますので、取り残しのリスクが少なく手術後の痛みも胸腔鏡だけを用いた手術と大きな差はありません。しかしながら、それでも切除する領域が大きい場合には、無理があります。

また、過去の肺の病気によって酷い癒着がある場合には胸腔鏡手術が選択されることもありませんし、手術中に血管を傷つけて出血してしまった場合には開胸手術に切り替わることがあります。

胸腔鏡手術が選択されるケース

開胸手術は手術中の患者の負担はもちろん、手術後も胸の筋肉の切断に伴う痛みが長く続くこと、あるいは、切除する肺の量によっては呼吸機能への負担も大きくなります。

心肺機能が低下している高齢者や糖尿病や肝疾患といった別の病気を持っている場合には、体力的な問題や術後の生活を考えて開胸手術が不可能と判断されることがあります。

標準治療ではこのような場合には放射線治療が選択されますが、もう一つの選択肢として胸腔鏡手術という選択肢があります。

最近では、肺がんを検出する設備の進歩に伴い極めて初期の小さな肺がんが発見されるケースも少なくは無く、そのような場合にも胸腔鏡手術が適用されるケースが増えてきています。

胸腔鏡手術のメリットとデメリット

先進医療の一つとして肺がん治療において注目を集めている胸腔鏡手術ですが、先進医療であるが故に治療実績が少なく、どのようなケースまで適用できるのかということを判断するための情報が少ない方法でもあります。

しかしながら、内視鏡の技術や手術をサポートする器具類の発展に伴い、可能性が大きく広がる画期的な方法でもあります。現在指摘されているメリットとデメリットにはどんなものがあるのでしょうか?

胸腔鏡手術のメリット

最も大きなメリットは、開胸する大きさが小さくても大丈夫な点です。

従来の開胸手術では肋骨に沿って20㎝ほど切開して手術するのに対し、胸腔鏡だけで手術する場合には2㎝程度の穴を数個開けるだけで手術が可能になります。

開胸手術と併用する場合でも切開は10㎝以内ですので、術後の呼吸機能の低下や痛みも少なく、患者のQOL(生活の質)は著しく向上することになります。

回復が早く、入院している期間が短くなるというのも大きなメリットと言えます。

胸腔鏡手術のデメリット

画期的な方法ではありますが、メリットばかりではありません。

胸腔鏡のレベルも進歩しているとはいえども所詮はカメラですので、視野には限界があります。

肺のように血管が複雑に走っている臓器では血管を傷つけることによる出血というのは大きな問題ですが、癒着で見えないということが起こることもあります。

そして、最大のデメリットというのが、技術の習得が難しいということです。

不謹慎な言い方かもしれませんが、モニターを見ながら手元のスイッチを操作するというまるでテレビゲームのような方法です。

胸腔鏡の先端部のカメラから映し出される限られた範囲の画像から、遠隔操作で手術器具を動かして患部を切除して後処理も行うというハイレベルの技術が要求されます。

設備を設置するだけではなく、操作する医師の育成も必要というわけです。

参考文献

  1. 国立がん研究センターのがんの本「肺がん」
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