がんと「鍼灸」

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がんの補完代替医療の利用実態の調査によると、日本の医療現場で8.3%ほどの方が鍼灸を利用していると報告されています。

鍼灸はがん治療や予防目的以外にも用いられており、20~30%ほどの日本人が一生のうちに一度は鍼灸治療を受けていると言われています。

1.鍼灸とは?

鍼灸は、中国に起源をもつ伝統的医療のひとつで、一般に「はり・きゅう」と呼ばれています。

日本に鍼灸医学が伝来したのは6世紀初めの飛鳥時代で、それから明治時代の初期までの長い期間にわたり東洋医学あるいは漢方医学の一分野として活用されてきました。

幕末にオランダ医学(西洋医学)が伝えられてから鍼灸治療を含む東洋医学は衰退していきましたが、最近になって公的な医学研究所や医科大学などで科学的な検証がなされ、鍼灸医学の効果が証明されるに至り、再び注目されています。

鍼灸はひとくくりにまとめられることが多いですが、鍼と灸では施術の方法が異なります。

1-1.鍼の施術について

鍼を用いた治療では、経穴(ツボ)を刺激するために細い鍼を身体に刺して治療を行います。

鍼を刺すので「痛そう」というイメージがあるかもしれませんが、鍼の治療で使用される鍼は太さが0.14~0.33mm程度で長さが40~80mm程度と、注射針と比べてもかなり細いので実際には痛みはほとんどありません。

使用する鍼の太さには若干違いがありますが、鍼師は治療する部位によって鍼の太さを変えていきます。

鍼の刺し方には『撚鍼法(ねんしんほう)』や『打鍼法(だしんほう)』、『管鍼法(かんしんほう)』などがありますが、現在スタンダードとなっているのは管鍼法です。

鍼は細くて長いので曲がりやすく、意図した部位にきちんと刺すためには高い技術が必要とされます。管鍼法では細い管に鍼を通して刺入(しにゅう)しますので、鍼が曲がるといったことを避けることができます。

鍼の治療においては、鍼で上下に動かしたり、回したりすることで、経穴に刺激を与えていきます。また、鍼に低周波の電流を流して刺激を与えることもあります。

1-2.灸の施術について

もぐさ(よもぎの葉の裏にある白い綿毛のようなもの)を経穴の上で燃焼させるのが灸の施術です。灸の施術は大きく「直接灸」と「間接灸」の2種類に大別されます。

直接灸は、もぐさを直接皮膚の上にのせて着火させるもの、間接灸は、もぐさと皮膚の間に空間を空けて着火させる方法になります。

直接灸は熱い刺激が皮膚に加わりますので、施術後は皮膚に水泡ができるなど灸の痕が残ってしまいます。

間接灸は、もぐさと皮膚の間に空間を設けたり、切った生姜、にんにく、味噌などの緩衝材を入れたりしていますので、熱が適度なものとなり気持ちよく施術を受けることができます。

2.さまざまな症状や病気に効果がある鍼灸

鍼灸治療は、肩こりや腰痛、神経痛などにしか効果がないと一般的に思われているかもしれませんが、最近の研究によって多くの症状や病気に効果があることが分かってきました。

米国の国立衛生研究所の見解として、神経系疾患・運動器系疾患・循環器系疾患・呼吸器系疾患・消化器系疾患・代謝分泌系疾患・生殖、泌尿器系疾患・婦人科系疾患・眼科系疾患・小児科疾患に対して、鍼灸が西洋医学の補完代替医療として有効で科学的根拠があると発表しました。

具体的な鍼灸の適用例として以下のものがあります。

具体的な鍼灸の適用例
神経系疾患 神経痛・神経麻痺・けいれん・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー
運動器系疾患 関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
循環器系疾患 心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
呼吸器系疾患 気管支炎・喘息・風邪および予防
消化器系疾患 胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
代謝内分秘系疾患 バセドウ病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
生殖、泌尿器系疾患 膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
婦人科系疾患 更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊
耳鼻咽喉科系疾患 中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎
眼科系疾患 眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
小児科疾患 小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

引用:公益社団法人 日本鍼灸師会 こんな症状に効果があります<鍼灸の適応症>

3.がんの補完代替医療としての鍼灸

鍼灸の臨床試験は世界各国で行われており、がんの補完代替医療として効果があるという報告も多く寄せられています。鍼灸治療を行ったことによる効果として以下のものが報告されています。

  • がんにともなう痛みの緩和
  • 吐き気や嘔吐など、抗がん剤を用いた化学療法による副作用を緩和
  • 乳がん治療の副作用としてみられるホットフラッシュ(ほてり、のぼせなど)の軽減
  • 手術後の腸閉塞の予防
  • 闘病生活における精神的・心理的苦痛の緩和

このような効果がみられるために、がんの闘病生活における患者の生活の質を改善するために鍼灸を受けることにはメリットが多いと考えられています。

しかし、抗がん剤の副作用に関しては、早期のものに関してのみ効果がみられたということですから、すべてのがん患者の抗がん剤治療における副作用の緩和に役立つわけではないということを思いに留めておくようにしましょう。

4.鍼灸治療を受ける際の注意点

鍼治療は鍼を経穴に刺していく施術です。通常、治療にともなう出血はほとんどありませんが、まれに内出血や出血をともなうケースもあります。

もし、がん治療を受けている方で血小板の数値が少なくなっている方や、またがんが進行しているために出血しやすい状態になっている場合は、鍼治療にはリスクがともないますので治療については受けるかどうか慎重に判断しましょう。

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