胃がんで胃を全摘出した場合の食事や合併症について

胃がんが広範囲に広がっていた場合、胃の全摘手術を受けることがあります。

胃をすべて取り去ってしまうと聞くと、その後食事がとれるのかどうか心配になる方もいると思いますが、実際は胃がなくても、食道と小腸の一部をつなぎ合わせることで、食べ物の通り道を作ることができます。

ただし、やはり術前とは消化の仕方が異なるため、術後の体に合った食事をすることが大切です。

胃がんで胃を全摘出した後の食事や、術後に起こりうる合併症などについてご紹介していきます。

胃の全摘手術後に起こりやすい合併症

胃がんで胃を全摘出した後は、以下のような合併症に注意が必要です。

腹腔内膿瘍

胃の全摘手術の後は、食道と小腸の一部(空腸)をつなぎ合わせることで、食べ物の新たな通り道を作りますが、このときに縫い合わせた部分がうまくつながらないと、つなぎ目から消化液や食べ物などが漏れてしまうことがあります。

その結果、炎症が起こって熱や痛みが生じるほか、つなぎ目からおなか全体に膿(うみ)が広がってしまい、腹膜炎を起こすこともあります。

場合によっては、おなかの中をきれいにするための再手術が必要です。

膵液漏

胃と同時に膵臓の周りのリンパ節を切除した場合、膵臓の表面から膵液という消化液が漏れ出してしまう膵液漏が起こることがあります。

膵液は、たんぱく質や脂肪を消化するための液であるため、漏れ出すと周りの脂肪を溶かして膿瘍を形成することがあります。

特に内臓脂肪の多い男性は高リスクといわれています。

腸閉塞

開腹手術後に起こりやすい合併症のひとつです。腸が癒着(ゆちゃく)したり、食べ物の流れが悪くなったりすることで、腸が詰まってしまう症状を指します。特に胃を全摘出すると、食べ物が直接小腸に入るため、腸管に詰まって腸閉塞を起こす危険性が高まります。術後数年たってから起こることもあり、長く注意したい合併症です。

腸閉塞になると、吐き気や激しい腹痛などが起こり、放置すると生命を脅かす危険性もあります。早めの受診が大切です。

胃を全摘出した後に気を付けたいダンピング症候群

胃を全摘出しても、食事を口からとることは可能です。ただし、胃袋がなくなった分、一度に食べられる量は減るため、少しずつ、何度か回数を分けながら食べる必要があります。

また、胃がんの手術後はダンピング症候群に注意が必要です。ダンピング症候群とは、血糖値の乱高下によるさまざまな症状を指します。

通常、食事の際にはインスリンというホルモンが膵臓から分泌され、血糖値がゆるやかに下がるのですが、胃の全摘手術後は一気に食べ物が小腸に流れ込んで栄養が吸収されるため、糖分を多く含む食べ物をとると血糖値が急上昇します。すると、体は危機を感じて、インスリンを一気に放出するため、今度は血圧が低下しすぎてしまうのです。

その結果、食後に眠気や脱力感、動悸、冷や汗などの症状が起こり、ひどい場合は意識を失ってしまうこともあります。糖尿病の治療で、インスリン注射をしている方にもよく起こる症状です。

食後すぐではなく、2~3時間たってから起こる遅発性のダンピング症状もあるため、気を付けましょう。ダンピング症候群を防ぐためには、なるべく1回の食事量を少なめにし、特に糖分を多く含んだ食べ物を一気に食べないことが大切です。

また、よく噛んでゆっくり食べることで、栄養の吸収をおだやかにできます。

実際に低血糖状態になった場合は、逆に糖分を補うことで症状が改善するため、ブドウ糖や甘いジュースなどを常備しておくことをおすすめします。

低血糖の症状が出た場合に、下がりすぎた血糖値をすみやかに上げることができます。

貧血

胃を取ってしまうと、血液を作るために必要なビタミンB12が吸収されにくくなり、貧血を起こしやすくなります。

ビタミンB12は肝臓に蓄えられているため、足りなくなってもすぐには症状が出ませんが、術後数年たってから貧血を起こすことが多くなります。

予防のためにも、牛肉や豚肉、アサリ、ホウレンソウなど、普段から鉄分を多く含んだ食べ物を意識して食べることが大切です。また、必要に応じてビタミンB12の注射も行われます。

骨粗しょう症

胃を取ると、カルシウムの吸収も悪くなるため、骨がもろくなる骨粗しょう症にかかりやすくなります。

乳製品や小魚など、カルシウムを含む食品をとることも大切ですが、状態によってはカルシウムを補うための薬物療法が必要になることもあります。

上記をまとめると、胃を全摘出した後は、以下の点に気を付けることが大切です。

  • 一度の食事量を少なく、回数を多くする
  • 糖分を多く含んだ飲食物を一気にとらない
  • 鉄分とカルシウムを意識して摂取する

新しい食事法に慣れるまでは、体重が減少したり、眠気が出たりとさまざまな悩みを抱える患者さんも多いと思いますが、あせらず、着実に少しずつ栄養をとっていけば問題ありません。

わからないことがある場合は、医師や看護師に相談しながら、ゆっくりと自分のペースで食事を楽しむようにしましょう。

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